働く環境づくり~双極性障がい編~

障がい者が就労するうえで、「どのような障がいであるか?」を伝えることは、とても重要です。身体障がい者や視覚や聴覚など、周りの人が目で見える障がいは比較的伝わりやすいですが、精神障がいについては、その理解や適切な対応が難しいことが多くあります。精神障がいの中でも、今回は双極性障がいについて考えてみます。

双極性障がいとは

双極性障がいとは、別名躁うつ病とも呼ばれ、精神障がいのひとつです。気分障がいの一種に分類されており、名前の通り「激しい気分の高まり」と、「気持ちの低下」の二極に気持ちが大きく振れてしまう症状です。気分が高まっている状態のことを、「躁状態」といい、気持ちが低下していることを「うつ状態」と呼びます。もう少し細かく分類すると、この躁状態が「激しい気分の高まり」であれば、「双極Ⅰ型」で、軽い躁状態であれば、「双極Ⅱ型」となります。

躁状態のときは、現実離れした言動をとりがちであり、自分の状態を、周りにうまく合わせることができず、関係を壊してしまいがちです。一方で、うつ状態のときは、憂鬱な気分になると同時に、躁状態のときの自分の言動に嫌悪感を感じ、より気分が落ち込んでしまうのが、双極性障がい(躁うつ病)の特徴です。

双極性障がいが引き起こす問題

実際に、双極性障害があると、どのような問題が起こるのでしょうか?

ある40代の男性は、大手企業の総務事務などを10年以上経験してきたベテランビジネスマンでした。以前は、保険会社の総務をまかされており、朝から晩まで働く日々が続いていましたが、そのストレスが、少しずつ、心身を蝕んでいたようです。ある頃から、仕事へのやる気がどうしてもでないばかりか、周りの人間に対して非常に怒りっぽくなってしまい、迷惑をかけてしまうことが増えてきました。会社から病院へ行くように指示され、「双極Ⅱ型障がい」との診断を受けたそうです。

たしかに、双極Ⅱ型はⅠ型よりも躁状態が軽度とされていますが、一方で再発しやすいという特徴もあります。休職後のリハビリをかねて、職場復帰をした男性ですが、必要以上に周りの目を気にするようになってしまい、結局退職してしまったそうです。

また、双極性障がいが認められたあとも、再就職が難しかったり、リハビリセンターや支援センターへ、定期的に通うことも難しかったりする場合があり、前進や後退を繰り返しながらというケースが多いようです。

双極性障がい者との付き合い方

どんな障がいにもいえることかもしれませんが、精神障がいは、本人にとっても目に見えないもののため、素直に受け入れることができるか、そうでないかは、個人によってさまざまです。双極性障がいとの診断を受けても、それを認めたくない、職場で障がい者とみられたくないという方も、もちろんおられます。

職場や周りの人間ができることは、「障がい者だから」という理由で、できることとできないことを、最初から決めつけてしまわないことです。これは、他の障がい者にもいえることですが、双極性障がいのような、精神の障がいを抱えている人に関しては、より意識すべきことかもしれません。地道にコツコツ、毎日同じ仕事を続け、ひたむきに頑張る。このような、日本人の間で支持されやすい取り組み方は、双極性障がいを持つ者にとって困難が伴うことも多いことでしょう。

しかし、考え方によっては、躁状態のときにはとても大きな仕事をやり遂げる可能性も持っているともいえます。周りの人間は、本人がやり遂げたことをなるべく評価し、うつ状態のときの自己嫌悪を緩和させる手助けができるかもしれませんし、評価の仕方によっては、本人が無理をしすぎないよう、コントロールすることができるかもしれません。また、本人とよく話し合い、そのときどきに応じて、してほしいことはなにか、その中でできることはなにかを、決めておくこともよいでしょう。

もちろん、薬の服用をしっかり守るなど、本人が、医師の指示に従うことも大切です。真面目なタイプも多いため、あまり心配は必要ないかもしれませんが、しっかり治療に取り組んでいることも評価しましょう。また、障がい者本人にとって、落ち着いて楽に仕事に取り組める環境こそがベストである、という意識を職場内で共有しておくことも必要かもしれません。

双極性障がいにおいて、最も陥りやすいのが、自分の目線で物事を見すぎてしまうことです。客観的なつもりではいても、実は周りの目を、必要以上に気にしてしまっているケースも多くあります。
目に見えにくく、自身で症状を把握するにも、数年かかる場合もあります。とはいえ、適切な治療と周りのサポートで、問題なく社会生活を送れるようになる可能性も十分にあるので、悲観しすぎないこと、させないことが大切です。ひとりで抱え込むことだけはないよう、障がい者本人が感じていることと、周りから見てどうなのかを落ち着いて話し合い、少しずつ改善していこうという、前向きな意識の共有が必要です。

 


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この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。

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