試行錯誤の末に実現!三菱地所プロパティマネジメントが挑んだテレワーク業務切り出しの軌跡

新型コロナウイルスの影響により、障がい者雇用のあり方も大きく変わろうとしています。

そんな中、株式会社スタートライン(以下、スタートライン)主催のウェビナーEXPO2020~障がい者雇用withコロナ~が開催されました。

ウェビナーEXPO2020~障がい者雇用withコロナ~とは?

ウェビナーEXPOは、全6日間、各日1テーマの全6テーマで構成されています。
障がい者雇用に関するテーマ毎に、企業の障がい者雇用担当者をお迎えし、各社の取り組み事例を紹介しています。

第6回目は、スタートラインと障がい者の新しい働き方を提供する拠点を提供する拠点「インクルMARUNOUCHI」を協業で立ち上げた三菱地所プロパティマネジメント株式会社(以下、三菱地所プロパティマネジメント)の総務部、砂原 豊氏ご登壇のもと、『試行錯誤の末に実現!三菱地所プロパティマネジメントが挑んだ テレワーク業務切り出しの軌跡』というテーマでお話がありました。

障がい者のオフィスワークが変わる「インクルMARUNOUCHI」とは?

三菱地所プロパティマネジメント株式会社 総務部 砂原 豊氏

障がい者雇用に取り組む企業の担当者の中には

・テレワークに移行する際の障がい者への業務の切り出し方がわからない
・障がい者がテレワークに移行して、しっかり業務ができるのか不安

などの悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回のお話は、新型コロナウイルスの影響で余儀なくされたテレワーク、その中で社内外のあらゆる障壁を乗り越えるための試行錯誤を繰り返した軌跡や、その末に実現した業務の切り出し方法、テレワークと障がい者雇用の可能性についてです。

障がい者雇用を取り組むうえで、ぜひ参考にしてください。

目次


重要書類のセキュリティの都合上、テレワークでの業務切り出しが難しかった

■コロナ禍以前の業務内容はどのようなものでしたか?

「インクルMARUNOUCHI」で働いている障がい者メンバーのお話です。コロナ禍以前にあった業務として、契約書のデータ化というものがありました。

三菱地所グループにおいての課題は、当社が保管している賃貸借契約書などの重要書類が、東京で災害が起きたときに失われてしまう懸念があることでした。
そのため、契約書を電子化し、紙ベースの契約書を地方に移送しております。

働き方改革などに合わせて働きやすい環境づくりをしましょうといった背景があり、2017年から賃貸借契約書などの書類の電子化が始まりました。

そのサポートをしていたのが、当社の障がい者(以下、サポート社員)の方々でした。

■ちなみに書類の量はかなりあるのでしょうか?

全国展開しておりますので、書類の量は莫大です。

本来であれば金庫に収めてしまうのですが、営業上常に必要となるため各営業管理部での保管をしていました。運営するビル内の各テナントの契約書もあるため、本当に書類は莫大な量ですね。

■新型コロナウイルスの影響で在宅勤務を余儀なくされましたが、そのときの状況はどうでしたか?

どの会社もそうだと思うのですが、本当に想定外ですよね。
当社も急遽、在宅勤務に移行しました。
しかし書類の電子化は、出社を前提とした作業であり複合機で1ページずつスキャンをするという業務のうえ、重要書類を扱うので、在宅での業務は難しくなってしまいました。

突如の在宅勤務、サポート社員から何をすればいいのかという相談を受けることがありました。

最初は思いつく限りのことをお願いしていたのですが、それにも限りがあるので、書店で参考図書を購入して勉強してもらったり、スタートラインさんに相談したりしていました。ただ、それにも限りがあるので業務切り出しにはかなり労力をかけました。担当者も各部署に何か業務がないか聞いて回ったりしましたね。とは言え、本業である書類の電子化は遅れるばかりでした。

試行錯誤を繰り返したことで生まれた打開策

■本業が思うようにできなくて、みんなが疲弊している中、その状況を打開した策はありますか?

打開策のひとつとして挙がったのは、契約書を搬送して在宅でデータ化できないかという案でした。

出社してスキャンしたデータと搬送した契約書を突合することは在宅でもできるのではないかという考えでしたが、セキュリティ上、不可能でした。

いくら搬送方法に注意しても、在宅で契約書を紛失した際のリスクなどを考えるとNGにせざるを得ません。

もうひとつ挙がった案は、先ほどもお話ししたとおり、会社貸与iphoneで画像撮影し、iphoneを自宅に持ち帰って突合するというものでした。

しかし、それもセキュリティの関係や効率的ではないという理由で実現はできませんでした。やはり、iphoneを紛失した際のリスクなどを考えると現実的ではなかったですね。

こうして試行錯誤を繰り返した結果たどり着いたのが、iphoneで動画を撮影し、事前に撮影したデータをクラウドサーバーに保管しておき、自宅持ち帰りのパソコンで突合する発想です。

携帯動画撮影&クラウド保存案

画像ではなく動画にした理由は、1契約書1ファイルで管理できるからです。画像だと契約書1ページ1ページを撮影するため、ファイルが膨大になってしまい管理が大変です。また、動画だと「再生」、「ストップ」、「再生スピードの変更」が可能なため、データを入力しやすいと考えました。

この際、2つのデータを照らし合わせることにストレスを感じさせないように、自宅持ち帰りパソコンに更にプラスして、サブモニターを準備しました。
モニター2台を並べることは好評を得て、ストレスなくデータの突合ができるようになりました。

正確にデータの突合をするために細かな工程を組んだり、複数人によるチェックを取り入れたりなどの工夫をしました。

業務としては手数がかかって大変ですが、自宅で業務を探り探りやっているよりも、明確に業務がある日々を送ることで、業務の前進並びにモチベーションを保つことにもつながったので、結果としてよかったです。

■クラウドサーバー保存のデータはどのように管理されていたのでしょうか?

確認が終り次第データを削除するように指示しました。

1次チェックは誰がしたか、2次チェックは誰がしたかなど、担当した人が名前を残し、全てが終われば最後のチェック担当者が削除することでデータがかさばらないように工夫しました。

書類の保管にも担当した人が印を残しておくことで作業の重複漏れがないように、また、誰が業務を引き継いでもスムーズになるようにも工夫しました。

コロナ禍以前と変わらない成果物の品質を保ち、サーポートメンバーのモチベーションも上がった

■コロナ禍以前と、テレワーク移行後の業務の質や量に違いはありますか?

成果物の品質は以前と変わりなく、高品質を保てています。

一方、業務量は、出社の割合が少なくなったこともあり減りました。
ただ、業務が見つけられずに悶々とするよりは、現状は良い状態だと思います。

■メンバーの働き方に違いはありますか?

業務の準備をする上で、メンバー同士がこれまでよりコミュニケーションを取るようになりました。

在宅勤務で離れて仕事をするようになったことで、メンバーのコミュニケーションの意識が高くなったように感じます。

■メンバーの体調面やモチベーションの様子はいかがでしたか?

現在は、体調やモチベーションに関して大きな懸念事項はありません。

ただ、私が不安に感じているのは、業務がなくなってしまったらどうだろうという点です。新型コロナウイルスがいつ収束するかわかりませんが、今の状態が続くのであれば、問題ないと思います。

当社では営業系部署も在宅に移行しております。

営業や交渉なども在宅で行わなければなりません。書類のデータ化は、コロナ禍での在宅時でも交渉などがスムーズに行えるため、非常に役に立っているというフィードバックがありました。こうした社内からの高評価もメンバーのモチベーションにつながっています。

まとめ:「できない」とあきらめないことが大切

当社では、サポート社員採用を行いつつ、各部署の業務の棚卸しを進めています。

これは、コロナ禍前から進めていることで、毎年業務の棚卸をして、何をすべきか計画を立てています。
この計画に、コロナ禍によってテレワークやサポート社員雇用というものが大きく関わってきています。

業務の切り出しやサポート社員雇用については、「できない」とあきらめずに、何か打開策のヒントがあるのではないかと可能性を突き詰めていくことが業務指示者にとって重要と思います。


この記事を書いた人

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Startline編集部

この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障害者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。