行動分析学での「行動」の定義「死人テスト」とは?

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「死人テスト」とは?

「死人テスト」とは、死人にできること以外のことすべてを「行動」と定義し、行動か否か確認する行動分析学の基礎用語です。

行動分析学関連の記事はこちらをご参照ください。

一方、死人という単語の印象から嫌なイメージを想起してしまう方が多いかと思います。

それでは、このように考えるのはいかがでしょうか。自分が死人のようなゴールに向かわないようにしてくれるテストである。死人は何もできません。何かをすることが人生のゴールになります。

目標(ゴール)設定の際、何もすることのできない死人の方が、達成しやすいゴールを設定してしまっては目標設定になりません。これを防ぐための行動分析学の中での考え方が「死人テストDead-man test」なのです。

「死人テスト」を簡単に言い換えると、「死人にもできることは行動ではない」ということです。行動分析学では「否定形」「受け身形」「状態」で表現されることは行動と捉えません。

たとえば、「ご飯を食べない」「掃除をしない」「考えない」などといった否定形を用い表現されるものは死人でもできてしまいますので、行動分析学の定義だと行動ではありません。また「話しかけられる」「叩かれる」などの受身や、「黙っている」「目を閉じている」などの受身も同様に死人でもできますので、行動ではありません。

「死人テスト」は行動分析学という学問においても非常に重要な定義です。この定義において「行動」でないもの。つまり死人でもできることには、前後の変化がありません。前後の変化がないということは、観察して分析することができないということです。

それでは、「死人テスト」をはじめとした行動分析学を活用し目標設定と実際のアプローチを考えていきたいと思います。

ケース1.「朝起きられない」

まずは「朝起きられない」ということは死人でもできますので、「朝起きる」と変換します。

その後、具体的な目標設定を行います。例えば朝八時に起きることを目標に、週何回達成できるかを計測することにします。数値を計測することで、よりわかりやすい目標設定となります。

「朝起きる」といっても起きて「何もしない」というのは死人でもできますので、より詳細に、朝目を覚ましてベッドから体を起こして活動する準備をすることが「朝起きる」と定義します。

次に、朝起きる際に何が起こるのか考えていきます。朝起きて目を覚ますと、寝起きなので体が重くうごきません。さらに布団をどけると、冷たい空気が体に触れ布団の中に戻りたくなります。このような多くの行動から、自分がなぜ朝起きることができないのかを明確化し、それに対応した具体的な対策をとっていきます。

例えば、朝寒いのが苦手だとしたら、夜暖房をつけたまま部屋を暖めておきます。このように朝起きれない原因をひとつひとつ分析し対策します。この対策がうまくいかなかった場合は、再度なぜ朝起きられないのかを再び仮説設定して対策していきます。こうして記録を取り、朝起きられない原因を特定し解決していくことで、目標の「朝起きる」をできるようにしていきます。

ケース2.「仕事中の離席が多い」

仕事中に何度も席を外してしまいふらふらしてしまうのを解消したいというケースになります。この場合は「仕事中に離席をしない」と目標設定しがちですが、「離席をしない」のは死人でもできてしまいます。そのため、具体的な回数を許容範囲の数値に設定します。

例えば「1時間に席を外すのは2回まで、それ以外は仕事に集中する」と設定します。ここで間違ってはいけないのは、不適切な行動だとしても、完全に0にするべきかどうか検討する必要があるということです。

「仕事に集中し1度も席を外さない」という目標設定をしてしまうと達成することは困難になりますし、無理に達成すると、今度は過集中で適度な休憩が取れなくなってしまうなどの他の弊害がでてしまいます。そのため、環境の中で許される数値に設定し記録します。

次に原因設定ですが、この場合も様々なケースが想定されます。
「トイレにいきたい」「集中力が途切れた」「嫌いな仕事から逃げたい」などが考えられます。このケースでも一つひとつ原因の分析をして「トイレにいきたい」といった仕方ないものは許容できるものとします。

あとは立ち上がりたくなった際に、足をその場で動かしてみるなどの根本の行動に対するアプローチなども取り入れていきます。今回のケースも仮説と対策を繰り返し、目標の頻度まで落としていきます。

株式会社スタートライン(以下、スタートライン)の支援技術の紹介

スタートラインでは今回ご紹介した応用行動分析を活用した支援技術以外にも様々な取り組みを行っております。自社に研究室を設け、日々、障がい者雇用支援に対して真剣に向かい合っております。

最後になりますが、スタートラインの支援技術についてと、その活用事例をいくつかご紹介します。


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Startline編集部

この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障害者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。