評価フィードバックの場を創る

こんにちは。オフィス温度28℃の梶原です。

多くの企業で4月の昇給・昇格という業務を控え、そろそろ忙しい時期に入ってくる頃かと思います。3月までの半年間の人事評価を行い、それに基づいて今後1年間の給与を決定する大事な時期です。

今日は、障がいを持つ社員の方への評価フィードバックについて、お話ししたいと思います。
といっても、結論からお伝えすると、健常者社員の評価フィードバックのプロセスと何ら変わりはありません。特別なことは何もないのです。
評価を決定するプロセスは、一般的には本人がまず自己評価を行い、それを受けて上長が評価し、社内での全体の調整を経て評価が決定し、それを本人にフィードバックするという流れかと思います。
ところが、障がい者社員については、このプロセスのどれかが省略されていたりはしないでしょうか。

これらのプロセスのどれかが不足していると、

  • 自分自身に対して行った評価は、上長の評価とギャップがあるのか、それとも一致しているのか?
  • 評価にギャップがあるとすれば、そのギャップは何が要因なのか?上長とのコミュニケーション不足が要因?それとも、自分自身を客観視できていないことが要因?
  • 自分自身のどんな行動やどんな成果が会社から評価され、それが昇給という形で自分に返ってくるのか?

ということに気付くきっかけを失ってしまいます。
別の言い方をすれば、社員の皆さんがどこへ向かって進めばよいのかを見失ってしまい、組織の中で漂流してしまうのです。

これらのプロセスの中で最も重要だと思うのは、「評価結果のフィードバック」です。
「フィードバック」というのは、もともとは工学分野の言葉だそうですが、出力したものを入力側に返すことで修正や改善をするという意味合いを持ちます。人事評価上のフィードバックも、結果や事実を本人に返す(伝える)ことに加えて、仕事の仕方や方向性を改め、改善を促すところまでを含みます。

ところが、障がい者社員が定着しなかったり、戦力となっている社員から先に退職してしまう、といった困りごとをお持ちの企業ほど、このフィードバックに時間を割くことができていないな、と実感することが一番多いのも正直なところです。

こうした状況には、障がいを持つ社員にどこまで突っ込んだ話をしてよいものか、加減がわからないといったお悩みが背景にあると思います。
会社が求める行動や成果を残した社員へのフィードバックは別として、行動を改めることを求めたり、課題を指摘することがメインとなるフィードバックをする際には、行動や成果が上がらない理由が障がいによるものではないか?という固定概念が先に立ち、あまり踏み込んで本人に指摘をすることが憚られる、という心理が働くものです(私にも経験があります)。
ですが、だからと言ってフィードバックのプロセスを省いてしまうことで、組織の中で漂流してしまう状態を見過ごすことは、他の社員への影響などを考えても避けたいものです。

障がいを持つ社員に評価フィードバックを行う際に最も大切なのは、上司からの話と併せて、本人の話を聞く時間を持つことだと思います。上司からのフィードバックを受けて、本人はどう感じたのか、これからどのように改善に向けた行動をしていくのか、を確認することです。
その中で、それまで把握していなかった障がいに関する配慮を希望する声も出るかもしれません。あるいは、同僚と協働することに悩みを抱えているなどの声が聴かれるかもしれません。
こうした声を(厄介ごとだと捉えずに)組織や個人がバージョンアップする種、と捉えて一つ一つに向き合うことが大切ではないか、と思います。
もちろん、本人の独りよがりな思いが根底にあったり、あるいはすぐに対応できない要望も中にはあります。そういう場合は、客観性と愛情(!)を持ったうえで、ありのまま伝えることも時に必要ではないか、と思います。

時代は変わってきています。
日本の生産年齢人口は、減少の一途をたどっており、企業間での優秀な人財の獲得競争は厳しさを増してきています。これは、事業に貢献したいという欲求を持ち、そして自分を磨き続ける向上心を持った人は、会社や仕事へのエンゲージメント(意欲や愛着、一体感等)を実感できなければ、より自分が活かされる場を求めて転職をするという行動を起こやすい環境だということでもあります。障がいを持つ人についても同じことが言えます。

事業に貢献する障がい者社員が自走するためには、
「本人評価」、「上長評価」、「評価結果のフィードバック」、「昇給」の4つが必要です。

車に例えるとそれぞれが一つ一つのタイヤだと思います。どれか一つが機能していなかったり、バラバラに動いたりすると車は前に進みません。
前に進むためには、評価フィードバックは他のタイヤを同じ方向へ動かすために一番大事な役割を果たすのではないでしょうか。

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Startline編集部

この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障害者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。