2018年6月30日更新

精神障がいを持つ人の雇用【3】~処遇を決める~

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精神障がいを持つ人の雇用3 ~処遇を決める~

こんにちは。オフィス温度28℃の梶原です。

先月は、精神障がいを持つ人の採用選考の場で役立てていただきたいことについて、応募書類の読み解き方や面談時に留意する点についてお話をしました。(前回記事:精神障がいを持つ人の雇用【2】

今日は、精神障がいに限ったお話というわけではありませんが、大事なステップなので、丁寧にお話していきたいと思います。
書類選考や面接選考を経て、いよいよ内定を出す際、人事のご担当者の皆さんは、どのように処遇を決めていますか?

社内に障がいを持ち、雇用に関して配慮が必要な方に対する人事制度に基づく給与規定をお持ちの企業であれば、あまり悩むことはないかと思いますが、そうでない企業の場合、給与を含めた処遇をどのように決めればよいか、苦慮されるケースは少なくないのでは、と思います。
人事的に申し上げると、【早く、障がい者向けの人事制度・給与規定を作りましょう】、という至極もっともなお話をしてしまうことになるのですが、まだそこまでに至らない企業にとっては、次のポイントを参考にしていただければ、と思います。

まず、就業経験のない障がい者を雇用する場合は、原則、一律で初任給を設定し、そこからスタートするということで問題はないかと思います。
しかし、就業経験のある中途採用の場合は、いくつか留意点があります。

【1】就業経験年数の判断

社会人としての就業経験をどのくらい持っているかを考慮します。障がい者は、就業経験年数に関わらず、入社時は 一律「●●円」という設定は、いささか乱暴です。

一方で、入社して未経験職種や業務に挑戦してもらう場合は、他の職種での経験を持っていても、前職までのスキルや 経験を活かしきれるかどうかが不明なため、経験年数をそのまま加算するのではなく、多少の減額要因にすることは適切だと考えます。

【2】前職での処遇との見合い

これは、転職理由との繋がりが強い側面です。体調を崩したため前職を辞めることになり、次の転職先では、障がいに相応の配慮を求める場合は、前職での処遇を維持、あるいは処遇アップを実現することはあまり考えなくてよいでしょう。

一方で、キャリアアップを図るために転職しようとしている方に対しては、前述の【1】の様に未経験職種や業務の場合を除き、ご本人の経験を考慮した相応の加算を考えるのが肝要です。

【3】既存社員とのバランス

すでに障がいを持つ社員を雇用している場合は、その既存社員の処遇とのバランスが取れているか?も考慮します。
「処遇は一人ひとり異なるので、他の人と処遇の話は控えるように」と、個々の社員に話をしていても、“お金の話は漏れるもの(共有されるもの)”との前提に立ったうえで、誰に対しても説明がつく処遇設定をすることです。

尤も、昨今の障がい者採用市場の求人・求職の需給動向を踏まえると、既存社員の処遇との兼ね合いを意識しすぎると、採用が叶わない、というケースもあるかもしれません。
「給与」という大切な雇用の要素を、社外環境に応じて拙速に変えるということはあまりお勧めできませんが、無視できない側面であることも事実です。
社外環境に応じて新規採用者の入社時の処遇を上げる、という判断をする際には、既存社員の処遇の見直しも併せて行うことも検討しましょう。(その場合の見直し手法もいくつかありますが、ここでは割愛します)

【4】短時間勤務の場合の給与設定

障がい特性への配慮から、あるいは入社直後のスムーズな定着への配慮から、短時間勤務になるケースもあるかと思います。前者の場合は必須ではありませんが、特に後者の場合は、給与は時短を考慮しない満額の設定をした上で、短時間勤務の実績に基づき、毎月計算して控除するのが良いと考えます。

これは、就業時間の管理をしっかり行うことを、配属先と本人の双方に意識してもらうことを促すことに加えて、業務の都合上、本人の了解を得た上で、やむを得ない勤務超過があった際にも、明確に給与へ反映しやすい、という理由からお勧めします。しかし、想定される時短控除金額が高額となり、満額給与との開きが大きいことが想定される場合は、入社当初の社会保険料が高くなってしまいますので、その点は注意が必要です。

もちろん、時短控除がある旨を雇用契約書(労働契約書)に明記することをお忘れなく。

【5】試用期間(トライアル雇用)後の処遇見直し

入社時には3カ月程度の試用期間を設けるケースは多いかと思います。また厚生労働省による障がい者の雇用を促進するためのトライアル雇用助成制度を活用するケースもあるかと思います。(厚生労働省サイトご参照

私は、入社時には、まず3カ月の雇用契約を結び、その後に雇用契約を見直す、というステップを踏むのが適切だと考えています。前述の【1】~【4】を踏まえた処遇設定をした上で、さらに3カ月後には、入社時の処遇が適切だったかどうかを精査するステップを設けるわけです。

【6】受け入れ部署の人件費負担の軽減

障がい者を受け入れる部署では、業務指導や障がいへの配慮などにより、相応の負担感を持つ場合があるかと思います。初めて障がい者を受け入れる部署であれば、不安感も加わることでしょう。

そこで、受け入れ部署が負担する障がい者の人件費を、例えば50%は全社負担にすることで、部署の負担感を下げるという策も一案です。
会社の方針として、障がい者の雇用については、一律こうした軽減措置を講じることもできますし、入社後一定期間のみの時限措置とすることもできます。


以上が主なポイントです。

各企業によって、障がいを持つ人を雇用する際の考え方はそれぞれかとも思いますので、“これはうちでも使えそう”というポイントをご活用いただければ幸いです。

最後に。
給与を筆頭にした処遇は、雇用者と被雇用者の双方に納得感があることが極めて大切です。
特に障がいを持つ方の中には、自身の考えや思いをなかなか表すことができない人もいるでしょう。
処遇に関するコミュニケーションは丁寧に、慎重に行うようにすることで、入社後の不幸な早期退職の種にならないようにしたいものです。

 

<プロフィール> オフィス温度28℃代表。専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。 梶原 温美(かじはら はるみ)
オフィス温度28℃代表。
専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。
「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。
問い合わせ先
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この記事を書いた人

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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。

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