人事担当者が押さえておきたい雇用促進法の改正ポイントを解説します

2018年4月1日より改正障害者雇用促進法が施行されました。人事担当者が押さえておくべきポイントについて、以下解説します。

POINT
■民間企業の法定雇用率は2.2%となり、2020年度までに2.3%へ引き上げ
■短時間勤務の精神障がい者のカウントが0.5カウントから1カウントに
■今後の法定雇用率は2.5%が視野に

1.精神障がい者の雇用義務化とは

改正前の障害者雇用促進法では障がい者雇用義務の対象として身体障がい者及び知的障がい者とし、精神障がい者については雇用をした場合に特例として雇用率に含めるとされていましたが、今回の改正により精神障がい者も雇用義務の対象となりました。そのため法定雇用率の算定基礎に精神障がい者が加わるため、法定雇用率が引き上げとなります。なお精神障がい者の雇用義務と表現されますが、必ず精神障がい者を雇用しなくてはいけないというわけではありません。

今回の改正について特徴的なのは段階的に法定雇用率の引き上げを予定しており、できる限り速やかに雇用環境の整備をし、障がい者雇用の状況を整え、2020年度末までにさらに0.1%引き上げるとされたことです。
従来では5年ごとに法定雇用率の見直しでしたが、今回は就労環境の整備状況に照らし合わせ、受入側に配慮をした2段階での引き上げとなりました。

障がい者雇用が義務づけられる民間企業の範囲は従業員50人以上から45.5人以上となり、2020年度まで43.5人以上に変わります
障がい者雇用が義務づけられる民間企業の範囲は従業員50人以上から45.5人以上となり、2020年度まで43.5人以上に変わります

 

2.精神障がい者である短時間労働者の算定方法の変更

精神障がい者の職場定着を促進するため、精神障がい者である短時間労働者の雇用率の算定方法が0.5カウントから1カウントとなります。特例の内容は次の通りです。

精神障害者である短時間労働者(週所定労働時間20時間以上~30時間未満であって、新規雇い入れから3年以内の者または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の者)の雇用率におけるカウントについて、平成35年3月31日までに雇い入れられた者については、1人をもって1人とみなす

なお留意事項として以下の2点があります

――――――――――――――
・退職後3年以内に、同じ事業主(※)に再雇用された場合は、特例の対象としない
※子会社特例、関係会社特例、関係子会社特例又は特定事業主特例の適用を受けている
事業主の場合は、これらの適用を受けている、当該事業主以外の事業主を含む

・発達障がいにより知的障がいがあると判定されていた者が、その発達障がいにより精神障害者保険福祉手帳を取得した場合は、判定の日を、精神障害者保険福祉手帳取得の日とみなす
――――――――――――――

現行の採用方法では狙って新規雇用から3年以内もしくは手帳取得から3年以内の短時間勤務希望の精神障がい者だけにターゲットに絞って採用活動を行うには民間の人材紹介や就労移行支援機関に条件に合う精神障がい者の紹介をしてもらわない限りは難しいです。よって、今回の特例をきっかけに短時間求人やフルタイム求人を整備し、フルタイムの方でも、短時間の方でも受け入れることのできるような体制を整えて今回の特例を上手く活用していことがポイントとなります。

要件を満たした短時間の精神障がい者の雇用が1カウントとなります
要件を満たした短時間の精神障がい者の雇用が1カウントとなります

 

3.今後の法定雇用率について

改正障害者雇用促進法にて段階的な雇用率の引き上げが実施されますが、今回の改正時には以下の激変緩和措置という内容が盛り込まれました。

<激変緩和措置>
法定雇用率は原則5年ごとに見直し ⇒施行後5年間(平成30年4月1日~平成35年3月31日まで)は猶予期間
精神障害者の追加に係る法定雇用率の引き上げ分は、計算式どおりに引き上げないことも可能。

すなわち今回の改正で法定雇用率の引き上げとなりましたが、上記の激変緩和措置をもとに計算式通りの引き上げの実施はしませんでした。よって平成35年(2023年)4月1日以降は身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者を算定基礎として計算した率となります。そのため、段階的に引き上げとなる今回の期間で、今後の法定雇用率引き上げに向けた体制作りを目指すことがポイントとなります。
なお社内の障がい者雇用の整備に向けた目安として、今回の法定雇用率が定められた労働政策審議会障害者雇用分科会の計算結果をもとに平成35年(2023年)4月1日の法定雇用率を予測しました。

法定雇用率の算定式

法定雇用率 =  89.7万人 / 3705.0万人  =2.421% ※厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会資料より引用
法定雇用率 =  89.7万人 / 3705.0万人  =2.421%
※厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会資料より引用

 

上記の通り、今回の法改正の根拠として示された2016年度の各種統計値から算定された法定雇用率は2.421%となっています。よって今後の法定雇用率は2.5%を超えてくるものとして社内の準備を進めていく必要があります。

今回の改正について2017年度の全国の法定雇用率達成企業割合は50.0%と全体の半数が雇用率を達成できていない中での雇用率の引き上げについては企業にとってマイナスの影響に感じられるかもしれませんが、これを機に企業全体で障がい者雇用に取り組む契機として誰もが働ける環境を整えるプラスの機会ととらえて頂ければと思います。
障がい者雇用は採用をした障がい者の成長と職場環境の整備、戦力化を図るための全社的な支援体制の整備などを実施していくことで誰もが働ける環境づくりにつながっていきますので、今後の障がい者雇用に取り組む上で、雇用率引き上げという制度改正に捉われずに、働く側・受入側双方がWin-Winの関係になっていければ良いと思います。

 


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この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。

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