うつ病と密接な関わりがある、PTSDとは?

2018年4月より、障がい者手帳を持つ精神障がい者の雇用が義務付けられます。
精神障がいの中でも大きな割合を占めるものに「うつ病」が挙げられますが、この記事ではうつ病を発症する要因の一つである「PTSD」について取り上げようと思います。

PTSDとは何か?

 Post-traumatic Stress Disorder(PTSD)とは、日本語で「(心的)外傷後ストレス障がい」と訳されます。注目されるようになったきっかけは、1970年代の米国におけるベトナム戦争帰還兵の社会的不適応や、性暴力や虐待被がい者の精神的後遺症の問題でした。日本においては、1995年の阪神・淡路大震災やオウムサリン事件以降、メディアで多く取り上げられたことで関心が集まったとされます。

 PTSDを発症した人の半数以上がうつ病、不安障がいなどを合併すると言われており、アルコール依存症や摂食障がいを合併することもあります。PTSDに注目し、治療を受けることは、こうした多くの精神疾患を治療、あるいは予防することにもつながります。

 PTSDの原因となる心的外傷には、戦争や災がい、事故、犯罪など、強い恐怖感と安全上の脅威となる一過性の出来事が挙げられます。また、これらの一過性の外傷体験のみならず、虐待などの事例は、長期に慢性的な外傷体験になることが多いため、外傷体験が長期慢性的なものである場合、PTSDとして現れる症状は通常のものに比べ広範囲に及び、それを「複雑性PTSD」と呼びます。PTSDは、これら生命に関わる出来事を体験、または目撃したことにより、ふとしたきっかけでその光景がフラッシュバックすることが多い精神疾患です。そのためトラウマ体験に関する悪夢にうなされ、不安・緊張の強い状態が続き、トラウマ体験を想起させるような人・場所を避けることや、社会的に重要な場面を回避するようになるなどの症状を呈することもあります。

 また、PTSDは他の精神障がいとの合併が非常に高い割合で見られますが、その中でも、PTSD患者の45~90%に不眠が認められています。トラウマ体験に関連する強烈な恐怖感情を伴った悪夢が、レム睡眠中に生じ、覚醒後の不快感、恐怖感の中核となってなり、患者に甚大な影響を与えるのです。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災では、被災した人々の多くがその後の深刻な不眠に陥いりました。その要因は、人間に備わる動物的な自己防衛本能とも言えます。つまり、人類の祖先がそうであったように、現代を生きる人類も生命に関わる危険が差し迫っているときには、本能的に目を覚ました状態で警戒態勢をとるようになっているのです。そのため、東日本震災後の被災者は、もし次に津波に襲われてもすぐに逃げることの出来るよう、本能的に不眠を招いていたことが予測されます。また、生命の危機に晒されるような出来事の後に発生する不眠には、自己防衛本能としてのみでなく、不快な記憶の定着を妨げ、トラウマ体験による悪影響を防ぐ働きもしていることが分かっています。

PTSDと密接な関係にある「悪夢障がい」

 前述の通り、PTSD患者の多くには不眠症状があり、またトラウマ体験に関連する強烈な恐怖感情を伴った悪夢も発生します。悪夢の中でも、「極度に不快な夢」に長期間悩まされる場合は、「悪夢障がい」である可能性が高いです。

 悪夢障がいに悩まされる人は、睡眠時にほぼ毎晩悪夢に悩まされ、適切な睡眠を送ることが出来ないとされます。悪夢の内容は、「不安・恐怖などの否定的な感情を伴う傾向が強く、怒りや嫌悪、また生命を脅かすような危険なエピソードを伴う」場合もあります。このような悪夢は、悪夢障がいでない人でも人生で一度は見たことがあるかも知れません。悪夢障がいの生涯有病率は6~9割以上とも言われており、認知度は低いものの、決して他人事には出来ない病です。また、自殺未遂者の66%は、悪夢障がいに悩まされており、個人の抱えるストレスやうつ病などの精神疾患と悪夢には密接な関連性があることが予想されます。

 悪夢障がいに悩まされる人々は、睡眠中のみでなく覚醒時にも、その生活に様々な支障がきたされています。悪夢と結びつく暗所恐怖により、日没後にベッドに入ることに恐怖を感じ、必然的に夜明けから眠りにつくという、昼夜逆転の生活スタイルが生まれ、登校などの日常生活が困難に見舞われることなどの症状もその一つです。

 恐怖体験は、しっかりと記憶しておかなければ、次の危機への準備が出来ず、生命の危機に脅かされることになります。しかし、この脳の防御システムが過剰に機能することが、PTSDや悪夢障がいを招く原因と言えます。現段階で考えられる、PTSD患者の悪夢発生のメカニズムは以下の通りです。

①トラウマ体験に遭遇
②脳の覚醒や感情処理をつかさどる扁桃体や、脳幹網様体が過度に活性化し、
神経伝達物質やホルモンの反応性も崩れる
③レム睡眠のエネルギーは増加し、勢いあまって睡眠の断絶が発生することで
何度も中途覚醒が起こる
④本来は忘却されるはずの悪夢の内容を鮮明に思い起こすことで、睡眠障がいが生まれる

 そのため、PTSD患者の治療には、レム睡眠に焦点を当てた治療が有効とされます。ですが、PTSDのような、生死を脅かす程の恐怖や苦痛を感じる経験から生じる精神疾患の治療には、長い年月が必要な場合が多いことも事実です。
 
 現在の状態にのみ焦点を当てるのではなく、障がいを発症するに至った経緯を紐解き把握することで、個人の障がい特性に合わせた配慮が可能となります。個人個人に沿った対応を行なうことが、サテライトオフィスを運営するに当たり重要となってきます。

 


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