2017年9月22日更新

就労サポートの現場で問われる『傾聴力』とは

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StartNEXT!をご覧の皆様、はじめまして。

 私は、株式会社スタートラインの運営する、<サポート付きサテライトオフィス>でサポーター職として勤務しています。
そしてそのサポートの一環として、サテライトオフィスに就労されている障がいをお持ちの従業員の皆様(※以下メンバー様と記載いたします)の安定就労を目的として、定期的に個別での面談を実施させていただいています。本記事では、私自身が面談の中で重視している傾聴の姿勢についてお話を致します。

傾聴の姿勢とは具体的に何か
では具体的に傾聴の姿勢とはどのようなものなのでしょうか。
私自身は主に以下の3つの点に気を付けながら傾聴を実践できるように心掛けています。

受容的態度で接する

 まずメンバー様から相談を受ける場面では、話しやすい雰囲気をつくることが必要となります。自分の表情や態度、姿勢が相手に威圧感を与えていないか、注意しながら、優しい表情、ゆったりした身振り、ソフトな視線、温かい語調、言葉遣いを心掛けています。

 次に、メンバー様の気持ちを理解し尊重していくためには、メンバー様の様子を観察する必要があります。ここでのキーワードとなるのが、『非言語的メッセージ』という言葉です。非言語的メッセージとは、言葉以外の形で表現(身振り・表情等)されるメッセージのことを言います。他にも、語調(口ごもる、抑揚がない)や音調(強弱、高低)、テンポ(速い、遅い、息遣い)、言葉遣い(丁寧、ぞんざい)など、話す時のメンバー様の様子には今の気持ちを紐解くヒントがたくさん隠れています。メンバー様の様子を日頃から観察し、気持ちの変化の傾向を態度や行動の変化でとらえることは、メンバー様の本当の気持ちや本当に伝えたいことを汲み取るうえでとても大切です。

 加えて、うなずきや合槌(はい、ええ)によって、受容的態度を示すことも忘れてはなりません。ただし、うなずきや合槌も少ないパターンの中で繰り返してしまうと、機械的になり、返って会話を停滞させる要因となることもあります。あくまで、メンバー様の気持ちに寄り添い、他の非言語的なメッセージと合わせてうなずきや合槌を実践し、受容的態度を示していく姿勢が求められます。

共感的理解を示す

 メンバー様への受容的な態度を示すことができたら、相手の話したいことや気持ちを理解し、共感を示すように心掛けることが必要になります。ここで心掛けたいのが、メンバー様が話した事柄や気持ちを伝え返すということです。伝え返された言葉を受けて、相手と自分が同じ理解のもと話を進めることができているという安心感がメンバー様の中で生まれます。

 なお、自分の価値基準で評価や否定したりせず、メンバー様が本当に言いたいことは何かということに意識を向けながら、メンバー様の言った言葉で伝え返すようにしています。

例1
A「事業拡張のため、4月から3名の入社あるんです。」
B「3名の入社がある。」

例2
A「最近、Aさんが高圧的な口調で接してきます。自分は何か嫌われることでもしたのでしょうか。とても怖いんです。」
B「とても怖いんですね。」

また、メンバー様が二つの感情で、葛藤している場合は、両方の感情を受容し伝え返します。

例3
「業務の担当を任されて今はとてもやる気が湧いてきているんです。でも、上手くやれるかどうかは、とても心配です。」
「やる気はあるが、心配でもあるんですね。」

さらには、時にメンバー様の話が冗長だったり、同じ内容を繰り返し、話の方向性を見い出せない場合もあります。そのような場合は、相手の話の要旨をまとめて、伝え返す「要約」というテクニックがあります。要約によって、まとまりの無い考えや感情の整理ができるだけでなく、あるテーマについての話を終結させ、課題の明確化に一歩前進させることもできます。

要約については、できるだけ、要点を押さえ、系統立てて、簡潔にまとめてお話ししないと、かえって相手の混乱を招く可能性があるので、より慎重に行う必要があります。

 

質問で自己理解の深化を促す

 傾聴の姿勢でメンバー様と面談を進めていく中で、質問をする目的は2つあります。1つメンバー様の話で理解が難しい点を明確化させるためです。この際に行い質問はあくまでもメンバー様が話したことについて行います。

 そしてもう一つの目的は、相手が気づいていなかったり、回避していること、矛盾していると思われることを、メンバー様に深く考えてもらうために行います。これはある程度信頼関係が形成された上で、自己理解の深化を促すように働きかけていきます。

 質問は、時にメンバー様を誘導し、拘束する行為に繋がる行為であるため、質問の仕方や言葉選びを間違うと、築いてきた信頼関係を一気に崩してしまうリスクもあります。そのため、なによりもメンバー様に教えてもらうという態度を大切に質問していくことを心掛けています。

なお、質問の方法としては、以下の2種類があります。

①閉ざされた質問
「はい」や「いいえ」など一言、二言で簡単に返答ができる質問で、明確な回答が得られます。

例1:「体調はいいですか」
例2:「仕事は忙しいですか」
例3:「彼の意見には、賛成ですか、反対ですか」

 話すことに遠慮している様子が見られるときになどには、閉ざされた質問で相手を配慮した対応をしていくことが必要かと考えられます。
ただし、閉ざされた質問を続けて行うと、話の内容が質問者主導で誘導されやすいので、その点は注意する必要があります。

②開かれた質問
考えや感情などを相手の視点から自由に語ってもらう質問をします。

例1:「そのようなことを言われてどのような気持ちになりましたか」
例2:「どのようなことが理由で、落ち込んでいるんですか」

 開かれた質問では自由度が高いため、メンバー様の主観的なものの捉え方・感じ方を理解する上では、とても有効的な手段かと考えます。なお、質問に答えるというハードルを下げるためには、その意図や動機を前置きすることが好ましいです。併せて、質問に答えるということは、自分が言いたいこと言えているか、疑問に感じながら返答することが多く、その際には大きなエネルギーが必要です。そのため、メンバー様が質問に対して出した答えには、受容的態度で応答することを心掛けています。

傾聴の先にあるもの。『聴く』→『勇気づける』→『褒める』のサイクルを作る

 傾聴の姿勢で面談に臨むことで、メンバー様との信頼関係を構築し、さらには多くの気付きを得ながら、スッキリした気持ちになっていただくことは、安定したメンタルを保って就労を続けていくためにとても効果的なことだと考えます。ただし、面談を通して、今の状況や気持ちを整理していく中で、就労姿勢を変えなければ解決しない課題が浮かび上がることがあります。

『勇気づける』とは、『トライするハードルを下げること』

 明確化した課題を解決するために努力をするかどうかは、基本的には本人の意思に委ねられるべきことだと思います。

 しかし、課題を解決しなければ本人あるいは周囲の安定就労が脅かされる場合には、サポート職の使命として少なくとも一度は課題解決に向けたアプローチを働きかける必要があると感じています。そこで大切になるのが、課題解決に向けた道筋を明確にすることです。一つの課題をいくつかのステップに構成し直し、各ステップに応じた目標を設定していくことで、メンバー様に〝これならできるかもしれない。やってみよう!〝とトライする気持ちを『勇気づけること』ができるように工夫をします。

『褒める』ことで、新たな行動習慣を形成する

 面談の中で、今トライしている目標の進捗を確認し、達成できたことについては積極的に褒めていきます。行動分析学という学問では、『ある行動をした直後に良い事(心地良さ、苦しみからの開放)があると、その行動をもっとするようになる』ということが実証されています。ですから、ある特定の行動に対して『褒める』という〝良い事〝が紐づけられることで行動が習慣化し、課題解決に向けたステップを少しずつ進めることができるようになるのです。

 最後は、課題解決に向けたアプローチについてお話をいたしましたが、受容的態度を心掛けながら日々傾聴の姿勢でメンバー様へ接していくことがサポート職の基本だと考えています。『千里の道も一歩から』という諺ではないですが、現場の課題解決に急ぐのではなく、まずは身近にいる人の話に、『優しい表情でうなずく』ことから始めてみても良いかもしれませんね。

 


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この記事を書いた人

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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。

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