海外のダイバーシティから日本のダイバーシティを考える

こんにちは。オフィス温度28℃の梶原です。

ここ1〜2年ほど、近未来の仕事の展開を考えて、アジアの新興国を中心に視察や短期の語学留学をすることが増えてきています。

昨年は、カンボジア、ミャンマー、シンガポール、フィリピン、香港などへ行き、現地で事業をされている日系企業の現地法人や現地で独立起業された方々などにお会いしてお話を伺う機会をいただきました。長く海外で仕事をしている方々と話をしていると、同じ日本人でありながら、その価値観の違いに驚くことが頻繁にあります。また、現地の人と(たどたどしい英語で)話をすれば、その驚きがもっと大きいことは言うまでもありません。

 

さて、今日は、フィリピンのセブ島での英語の短期留学をきっかけにした「ダイバーシティ」に関するお話をしたいと思います。

少し本筋から逸れますが、セブ島といえば、南国のリゾート地としての顔に加えて、ここ最近では、欧米豪に行かなくても英語を学べる語学留学の場所として人気が高くなっていることをご存知の方も多いと思います。

英語をコミュニケーション手段として身に付けたいと思うのは日本人だけでなく、現地の語学学校には、中国人、ロシア人、台湾人、韓国人、ベトナム人も数多く来ています。

語学学校は、セブ島の中の経済特区となっているITパークというエリアに複数あり、このITパークは、アメリカを中心とした多くの外資系企業がコールセンターオフィスを構えている場所でもあります。

 

ところで、フィリピンは、LGBTの人たちが日本よりもはるかにオープンで受け入れられやすい国の一つですが、コールセンターでは、LGBTの中でもゲイの人たちが多く活躍しています。

コールセンターには、商品やサービスへの不満など、顧客からのクレーム対応業務があります。電話というコミュニケーション手段は、顔が見えない分、対応する担当者の声や口調が顧客満足度を左右しますが、ゲイの人たちは物腰が柔らかいので、コールセンター業務に向いているのだそうです。

実際に、ITパークの中を歩いていると、ゲイの人たちを多く見かけますし、カフェの店員でも、ちょっとした会話でこちらの心を和ませてくれるゲイの人が複数いました。

加えて、私が通った語学学校では、LGBTという言葉自体を知っている教師はいませんでしたが、LGBT(特にゲイ)の同僚や友達はたくさんいるという教師ばかりでした。中には、恋愛の悩みは女性の友達よりも、ゲイの友達のアドバイスの方が頼りになるという女性教師も・・・。

そして、その学校には、性別は男性でも心が女性という教師もいるとの話を聞き、私は以前、企業の人事として仕事をしていた際、性同一性障害をもつ人の受け入れにあたり、トイレ使用について悩んだことを思い出し、教師に質問したところ、その教師が女性トイレを使用することに対して、異論を唱える人(特に女性)も、特別視する人もいない、との回答でした。

このフィリピンの実態から、私は、「自分とは異なる他者の価値観を否定することなく、ありのままを受け入れてお互いを活かし合う」というダイバーシティの本質に触れた気がしました。

 

さて、企業において障がいを持つ人が活躍する場を作ることは、法定雇用率を満たして国の法律を遵守すると同時に、ダイバーシティの推進でもあります。

企業の人事部の皆さんは、障がいを持つ人を受け入れることが決まった際には、配属部署や同じフロアの人たちに対して、その人の特性や配慮してほしいことを入社前に説明し、理解を求めるということに気を配るでしょう。

もし事前に本人に関する正確な情報を他の社員に提供しないまま受け入れた場合、誤った情報が尾ひれを付けて社員の間を一人歩きしてしまい、障がいを持つ社員がその誤解に苦しみ、最終的に職場環境不全を原因として早期に退職してしまう、ということを引き起こすこともありますので、事前の情報提供は省くことのできない重要なプロセスです。

 

そして、人事部の皆さんがこのような情報提供をする際に、

「世の中には多様な価値観や特性があり、企業はこれらを活かすことで事業の推進と拡大を目指している」

というスタンスを大前提としてお話しすることが肝要だと私は考えます。

この大前提を社員の皆さんに伝えないまま、

「車椅子での移動なので、仕事で必要なファイルや備品は手の届く場所に置いてください」であるとか、

「口頭でのコミュニケーションだと理解しずらいので、業務に関する指示や連絡事項はできるだけ、文字や図にして伝えてください」という様な、ただ目の前の障がい者を受け入れるのに必要な情報提供だけに終始するとどうでしょうか。

社員の皆さんは、「自分たち(=普通)とは異なる人を受け入れるために許容するべきことを知る」という、ダイバーシティの本質とずれた理解をしてしまうことになりかねません。

そして、この理解のずれは、「普通と普通ではない」という意識を冗長させることに繋がり、残念なことに、ダイバーシティの推進とは真逆に社員の意識を引っ張って行ってしまうことになります。加えて、障がいに対する健全な配慮ではなく、特別扱いという意識を生み出すことで、障がいを持つ人の可能性を狭め、事業に貢献する機会を失ってしまうことにもなりかねません。

 

日本は、島国で且つ単一民族単一国家ですから、多様な価値観を受け入れ、お互いを活かすという必要性を強く感じる経験をしていません。

しかし今後は、個人としても、会社組織人としても、多くの外国人と共存していくことになっていくでしょう。

向き合う相手が、障がいを持つ人であっても、LBGTの人であっても、そして外国人であっても、「こうあるべき」と思い込まずに、「そうじゃないことがあることが当たり前で、そうじゃなくても大丈夫」と捉えることで、本来のダイバーシティが推進され、結果として、人と組織が強く逞しくなっていくのではないでしょうか。

 

<プロフィール> オフィス温度28℃代表。専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。 梶原 温美(かじはら はるみ)
オフィス温度28℃代表。
専門分野は、障がい者の雇用支援、人材育成、キャリア支援。
「自身の特性に向き合う人たちが尊重し合い、自走しながら事業に貢献する組織創り」を基本理念としている。
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この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。

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