2016年5月11日更新

虐待の定義、5つ言えますか?

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この記事のポイント

  • 虐待の類型はどのように定義づけされているのか
  • 企業で発生しうる可能性の高い虐待とは【データに基づいて推測してみましょう】
  • 社内で虐待が発生してしまった場合はどうなるのか【罰則規定は?】

障害者虐待防止法とは、平成24年10月1日に施行され、国や地方公共団体・障がい者福祉施設従事者等そして使用者に障がい者虐待の防止等のための責務を課すとともに、障がい者虐待を受けたと思われる障がい者を発見した者に対する通報義務を課す法律です。

障がい者の虐待というと、刑法に抵触する暴力や性的虐待などがイメージされやすいかと思います。これらの虐待は当然防止されなければなりません。しかし、本法で規定されている虐待のうち社内で発生しやすいケースは、上記虐待だけではないということを知っておく必要があります。

虐待の類型について、ここでは労働者に対する虐待に焦点を絞ります。

以下の5つです。

  1. 身体的虐待(暴力)
  2. ネグレクト(放棄・放任:食事を摂らせない、仕事を与えない、意図的に無視する、放置により健康・安全への配慮を怠る)
  3. 心理的虐待(脅迫、怒鳴る、悪口を言う、拒絶的反応、他の障害者との差別的扱い、意図的に恥をかかせる)
  4. 性的虐待
  5. 経済的虐待(障がいを理由に賃金を払わない、賃金が最低賃金に満たない、強制的に通帳を管理する等)

では厚生労働省が取りまとめ公表した、平成26年度使用者による障がい者虐待の状況を基に次のポイントを整理していきましょう。

【ポイント】

  1. 通報・届出のあった事業所は、985事業所で前年度より27.1%増加。通報・届出の対象となった障がい者も、1,276人で前年度より27.9%増加しています。
  2. 虐待が認められた障がい者は483人で前年度より22.9%増加しています。障がい種別は、身体障がい67人、知的障がい362人、精神障がい52人、発達障がい11人。
  3. 虐待を行った使用者は311人。使用者の内訳は、事業主258人、所属の上司43人、所属以外の上司1人、その他9人です。
  4. 使用者による障がい者虐待が認められた場合に労働局がとった措置は492件

まずは通報・届出件数が前年度比27.1%増加していることに着目しましょう。
これは虐待が明るみになった件数であり、本法の認知が高まれば高まるほど、これまで明るみになっていない隠れた虐待も増加する傾向が予見されます。

では、25年度と26年度の増加比と分布を見てみましょう。

虐待件数表

表で着目すべき点、つまりどの虐待が件数として最も多いかは一目瞭然です。約半数を経済的虐待が占めているのです。

この経済的虐待は特に知的障がい者に対する虐待が最も多くなっています。これはなぜでしょうか?

本法では虐待の防止と発見者に通報の義務が課されています。どの虐待を誰が一番発見しやすいか、想像に難くありません。

【記録・データとして残るもの=賃金】
【届出がなく最低賃金を下回っているものを常にチェックしているのが労働基準監督署】

いわゆる作業所で、知的障がい者に対する工賃として最低賃金以下の工賃を渡していたものの、最低賃金を下回る工賃として給付する正式な手続きを踏んでいなかったため、労働基準監督署が発見・通報するというケースが最も多いのです。

これは作業所だけではなく、企業においても起こりうることです。障がい者の賃金は、郊外では特に最低賃金で支払われている企業が多くあります。もし最低賃金改定のチェックを怠ってしまっており、最低賃金が上昇しているにもかかわらず働かせてしまっていた場合どうなるでしょうか?

「障害者虐待防止法には罰則規定がありますが、この罰則規定として企業に定められているのは、虐待の発見者から通報を受けた行政機関の立ち入り調査を拒んだり、調査に対して虚偽の報告をしたりした場合に三十万円以下の罰金が処されるとされているだけです。」

つまり、上記経済的虐待が発見された場合、直ちに障害者虐待防止法に基づく罰則が適用されるわけではありません。
労働局が発見・通報した場合、労働基準関係法令に基づく指導が行われ、最低賃金法に基づいた行政指導等が行われるということです。

身体的虐待や性的虐待が発見されれば警察へ通報がなされ、刑法に基づいて処分が行われるとともに、会社は信用を失うことにより大きな打撃を受けることになるでしょう。しかし、潜んでいるリスクはまだあります。

類型2,ネグレクト・3,心理的虐待です。

ケース1,
ある企業で障がい者を雇用したまでは順調に進み、法定雇用率も達成し行政指導を免れることは出来ている。しかし、その障がい者の方にどんな仕事を任せればよいか業務の切り出しがうまくいかず、数日の間仕事を与えることができなかったら・・・これはネグレクトと判断されておかしくない状況です。本人から関係機関に通報されることも考えられますし、ご家族から通報されることも考えられるでしょう。

ケース2,
ある企業が精神障がいをお持ちの方を雇用し、業務もうまく進めてくれている。上司や同僚ともコミュニケーションはとれているようだ、と人事担当の方は見ていたとします。ところが、同僚の方がこの方が持つ精神障がいについて理解が少し足りておらず、会話の中でほんの一言「その病気って治るの?」と聞いてしまった。精神障がいをお持ちの方はなぜかひどく傷つき、翌日から欠勤し症状が悪化し、退職に至ってしまった。それだけではなく障害者虐待防止法違反であると通報までしてしまい、行政の立ち入り調査がはいってしまった。

障がい者の虐待について「うちの会社では起こらない」と考えないほうが妥当かもしれません。起こりうることとして、対応策を予め立てておくことが人事ご担当者の方のお仕事のひとつでもあるでしょう。

(参考)厚生労働省 平成26年度「使用者による障害者虐待の状況等の結果を公表します

 


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StartNEXT!編集部
この記事は株式会社スタートラインの社員および専門ライターによって執筆されています。障がい者雇用の役に立つさまざまなノウハウを発信中。

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