精神障がいの労災申請が、H27年過去最多! 企業にできることとは?

仕事が原因で、ケガを負ったり病気になったりする「労災」。事故などによる身体的な災害が想像されがちですが、平成27年度の労災申請では、精神障がいが原因とされるものが、過去最多を更新しているようです。これにあたり企業は、どのようなことを考えていくべきでしょうか?

メンタルの不調による労災認定要件とは?

精神障がいによる労災申請には、厚生労働省が定めた基準があります。認定基準の対象となる精神障がいは、国際疾病分類第10回修正版(ICD-10) 第5章「精神および行動の障害」に分類されるものとされています。

・「精神および行動の障害」

F0 症状性を含む器質性精神障害
F1 精神作用物質使用による精神および行動の障害
F2 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
F3 気分(感情)障害
F4 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害
F5 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
F6 成人のパーソナリティおよび行動の障害
F7 精神遅滞(知的障害)
F8 心理的発達の障害
F9 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害、特定不能の精神障害

業務に関連して発病することの多いものは、うつ病(F3)や、急性ストレス反応(F4)などが代表的です。また、労災認定となる要件は、下記のようになっています。

1.認定基準となる精神障害が発病していること
2.認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
3.業務以外の心理的負荷や個体側原因により発病したとみとめられないこと

平成27年度、精神障がいによる労災請求件数の現状

平成27年度の、精神障がいによる請求件数は、1,515件で過去最多となっています。また、支給決定件数472件。平成26年度から25件減少したものの、依然として高い水準にあり、認定率は36.1%。3件のうち1件の割合で労災認定されていることを考えれば、業務内容が精神障がいに繋がらないか、しっかりと監督していく必要があると言えるでしょう。

また厚生労働省の資料では、業種別の精神障がいによる労災申請のデータが割り出されています。

・労災申請が多かった業種
製造業:262件
医療・福祉:254件
卸売業・小売業:223件

・労災認定された件数が多かった業種
製造業:71件
卸売業・小売業:65件
運輸業・郵便業:57件

中分野で見ると、「医療・福祉」の「社会保険・社会福祉・介護事業」から、157件の申請。「運輸業・郵便業」の「道路貨物運送業」が、36件の認定。それぞれ最多件数となっています。介護や運送業の負担増は、たびたびニュースでも取り上げられており、これは納得のいく数字といえるかもしれません。

ひとりひとりに合わせたメタンルケアが必要

労災認定の基準としては、業務による強い心理的ストレスがあったかどうかが重要視されますが、個人の事情も含め、精神障がいを患ってしまう原因は、複合的な理由によるものも少なくありません。広い意味でのメンタルケアを考えれば、労災認定の基準になるか、ならないかという視点だけではなく、ひとりひとりをよく観察したうえで、適切な配慮をすることが必要になると言えるでしょう。

障がい者雇用として雇い入れた障がい者はもちろんのこと、そのほかの従業員にも、過度な心理的ストレスがかからないよう注意しておくことが欠かせません。障がい者であっても、そうでなくても、職場におけるストレスは、能力を低下させてしまうのです。

業務の効率化、合理的配慮、従業員ひとりひとりと密に意見交換するなど、障がい者雇用において欠かせないノウハウを、職場全体に適用すれば、精神障がいによる労災を避けることにも役立つのではないでしょうか。

人件費が削減され、多岐にわたる業務が積み重なったり、当たり前のように残業があったりする職場も少なくありません。とても、ひとりひとりを気にかけていられないと感じる場面もあると思いますが、障がい者に対する配慮と同じように、ちょっとした工夫で、状況が改善する場合もあるはずですので、これを機に社内の状況をいま一度見直してみてはいかがでしょう。

参考:
ICD-10(国際疾病分類)第5章 精神および行動の障害
精神障害の労災認定

 


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